9 漸化式
 最近、この連載の主人公は一体誰なんだろうか? という憶測が、このコーナーを愛読して頂いている読者の中で取りざたされているという話である。が、この連載は、あくまでも「チームが主人公(スマイリー談)」であって、個人にスポットを当てているわけではない…とは言いつつも、表の主人公はスマイリーであることを、当編集部は声を大にして宣言しておく。
 とはいえ、長年の読者にとって、やはり最も気になり、最も「追い込まれて」ほしいのは当然ミケンにほかならない。よって、責任をもって編集部が声を大にしてまたもや宣言させて頂く。ミケンが裏の主人公である、と。

 さてさて、そんな前置きはさておき、やはり2人の主人公を追いかけて、編集部は今後も様々な情報アンテナを巡らせていこうと考えている。
 そして…早速、そのアンテナにミケンのある一言がひっかかったのだった。

編集部員

「ミケン氏のバタフライは上達しましたか?」

某S選手 「いえいえ、彼はフリーを『極める』って言ってましたよ、ニヤリン」
編集部員 「えっ、上達、ではなく『極める』んですか?」
某S選手 「ええ、極めるそうです、ニヤリン」

 そうなのだ。ミケンは、スマイ…もとい、某S選手のもとでフリーの特訓を行い始めたのである。何といってもスマイリ……もとい、某S選手の奥様であるスミ…もとい、ある『女性』は、某アジア東端の島国における50フリーのナショナルレコードホルダーである上に、マスターズにおける『わーるどれこーどほるだー』でもあらせられる。その夫婦と非常に親しく付き合っているミケンのことだ。きっと、完璧にタイムも極めてくれるに違いないのである。
 実際、編集部員もミケンの泳ぎを密かにチェックしに行ったのだが、従来のようなカタい泳ぎではなく、どちらかといえば滑らかな肩と腕の動きを既に習得しているのだ。そこに、爆発的なパワーが加われば、実際、とてつもないタイムが出そうな気配がプンプンビキャンビキャンと漂ってくるではないか。
 ミケンの運動能力が、かなり高いのは周知の事実である。それに加えて、熱心に自己を高める人間であることも、このコーナーにおける様々な連載によって明らかにされている。何よりも本業の数学講師として、現状に甘んじることなく、日々の努力を怠らずに、技術の研鑽や、教材研究に余念がないことも、ミケンの真面目で努力型の性格を表している。
 そんなミケンが『極める』のだから…これは、かなりの期待度だろう。そもそも、マスターズでのタイムは『初めてのターン』による緊張から生じた失敗であった。しかし、ミケンは今回、バタフライとの両天秤を捨てた。そして、ターンのない蔵本。なおかつ、『極める』のだ。
 とは言いつつも、2年前、最初に挑戦した時のタイムはレベルが低かったので、一気に去年は12秒の伸びを見せたものの、さすがに今回『等差数列』で12秒伸びる、などとは編集部も言わない。当編集部は、巷で言われているような、『鬼』などでは決して、ない。あくまでも現実的に計算できるシビアなヤツだと思っていただきたい。
 当編集部は、様々なデータを基に、様々な計算式を作った。そして、ある数式が、まさしく、現在のミケンにピッタリであるという結論に辿り着いたのである。それを読者の皆様へ高らかに宣言しておきたい。ミケンは、やるオトコだ。

ミケンのフリーのタイムがa1=48an+1an=−4・32-nの関係を満たすとき

一般項an=30+2・33-nが導かれる。(ただしnは蔵本における50mのレース回数である。)

n=1のときa1=48n=2のときa2=36n=3のときa3=32,…

よって、ミケンは、この夏3年目なので、32秒というタイムが漸化式により、義務化されたのである。

(どんよりと、夏)

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