5 必要条件
 水泳部員たちが戦々兢々としながら日々を過ごしている毎日。特に、バイオとダッシュが同じ校舎で業務をしている火曜日・水曜日・土曜日は気が気でない。2人が仕事の合間に一服しに行き、揃ってしまったら、新たにどんなストーリーが展開するか、たまったもんじゃない。
 実際、水泳部員たちは、ある恐怖を感じていた。というのは、夏の蔵本における大目標は、「リレーでランキング1位を目指す」というものなのだが、それ以外の個人種目においては、ナニにエントリーされるのか、が、全く不明なのだ。
 そんなとき、編集部員は、ある水泳部員から、ある貴重な情報を得た。そこで、インタビューに成功したので、ここに掲載する。
編集部員

「あのーっ、スマイリー選手に関する情報があるということですが…」

某D選手 「むふっ、そうなのだよ」
編集部員 「どういった情報ですか?」
某D選手 「スマイリーが、マスターズ大会のときに、ある一言を発したのだよ、むふふっ」
編集部員 「それは?」
某D選手 「スマイリーの奥さんがマスターズ大会で出た種目に関して、だよ。むふむふっ」
編集部員 「確か、25バッタと1コメ(個人メドレー)に出てましたね。私も大会を拝見しましたので知ってますが」
某D選手 「むふっ、ならば話は早い。実は、スマイリー君、奥さんの種目を見た後でこのように呟いたのだよ『あーあ、何だか1コメに出たくなったなあ』と、ね。むふっ」
編集部員 「では、夏の蔵本において、1コメ決定ですか?」
某D選手 「むふふふふっ。ワタシたちは基本的に優しいので、本人の願いを叶えるつもりだ。…が、しかし、蔵本は何メートルプールだい?」
編集部員 「あっ…、50です…」
某D選手 「むふっ、その通り。だから、2コメしかないだろう。」
 こうして貴重なスクープを手にした編集部員は、そのダッ…もとい、某D選手発言の真偽を確かめるべく、バイオにインタビューを敢行した。
編集部員

「あのーっ、夏の勤労者大会でスマイリー選手が2コメにエントリーするという噂を聞いたのですが…」

バイオ 「んっ?」
不機嫌そうだ。
編集部員 「本当ですか?」
バイオ 「うーん…正確ではないな。では」

 バイオは一方的に会話を打ち切った…が、編集部員は気づいたのだった。『正確ではない』という言葉の意味に…。
 夏の蔵本は「県選手権  国体選手選考会  勤労者大会」である。おそらく、バイオはスマイリーを「県選手権  国体選手選考会」にエントリーして、派遣選考記録である2分12秒32を突破させてやろうという魂胆なのだ。スマイリーの徳島県記録は2分10秒59。かれこれ10年前だから、今から推定で10キロ以上軽かったはずである。重くなれば、惰性で勢いがつく…ということは!
  スマイリーは10年ぶりに徳島県記録を更新するための必要条件『2コメにエントリー』を満たし、なおかつ、体重を活かして、その波に乗りきれられれば、この命題は成立する。

(軽く、夏)

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