2 恒等式
 前回、簡単な方程式により、ミケンとダッシュのノルマが設定された。種目は未定だが、ダッシュとミケンがバッタとフリーを担当して、35秒ずつというノルマ、である。
 但し、これにはある条件が許すかぎり、Xの可動範囲が生じるのであった。それは、あくまでもX=35、というパターンではなく、(ミケン+ダッシュ)=70ということであった。そもそも、バッタを蔵本のあの長いプールで50メートル泳ぎ切るのはなかなか苦難の道である。それをダッシュは回避して、ミケンに任せてみようか…という魂胆なのだ。ミケンにバッタを36秒で泳がせて、自分がフリーで34秒、ということは、ダッシュ自身がノルマを1秒負担してやるから、ミケンに楽をさせてやろうというありがたい御好意に違いない。
 とにかく、ダッシュの御好意は、まだ表面化していないので、近々編集部が責任をもってダッシュ当人とコンタクトをとってインタビューしてみようと思っている次第である。

 さて、どちらにしても、ウカウカできないのが競泳経験者2人だ。この2人は「伸びしろ」が存在しない。2人とも現役当時のタイムが出るはずもなく、出たら出たで、以前の競泳とは何だったのだろうという虚無感に襲われることは間違いない。だが、2人にも実際にノルマは存在するわけだし、それをクリアするのも実は結構やっかいだったりする。
 バイオは34秒というノルマだが、この3年間、長水路で34秒前半を出したことが、ない。元来スプリント能力に欠如するバイオにこれ以上の上積みはなかろう。
 ならば、本来、1人で200メートルを泳いでも、2分13秒を破ることのできる、今でも徳島県記録保持者であるスマイリーに、28秒という要求がなされるのは、自然な流れである。

 結局のところ

(スマイリー+バイオ+ミケン+ダッシュ)=133

であればよいのだから、内訳はさておき、133を左辺に移項して、

(スマイリー+バイオ+ミケン+ダッシュ)−133=0

 が常に成立するような値を満たせば、この恒等式は証明されるのである。

  スマイリーが28秒を切れば、常にこの恒等式は証明される。

(まだまだ、夏)

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