第2話 悪魔いっぱい
 ミケンの不在時、状況は刻々と変わっていく。無論、バイオ&ダッシュが、その張本人だ。そして、忘れてはならないのが、もう一人、『諸悪の根源』である、友好団体であるTSD(徳島スーパードルフィン)代表でもあり、徳島県水泳連盟の理事でもある松岡氏である。彼らは、マスターズ大会のたびに、半強制自由選択種目を設定しており、その種目決定によって、ミケンは2005年3月のマスターズにおいて、25バタフライに出場するはめに陥ったのだった。
 ある日、松岡氏よりバイオに1本のメールが届いた。

「6月の必須種目は何にしようか。50がいいんやけど

 この連絡を受けた水泳部員に戦慄が走った。今まで、25種目だったからこその「ノリ」だったのに、今度は、「冗談」では済まない50。この連絡は、ミケンの種目にも大いに影響を与えることとなった。
 当初、ノリでミケンに100メートル個人メドレー、通称1コメを泳がせる気が満々であったダッシュ&バイオも自らに降りかかってきた災難によって、ミケンどころではなくなった。他人を泳がせることには、尋常でないほどの執念を見せる2人も、自分たちが50を泳がされる可能性に、ビビりまくってしまったのだった。まさか、バッタか? いやはや、バックかも…
 だが、ここでめげるくらいなら悪魔とは言えない。ミケンにもこの50を泳がせるならば、ということで、自分たちも出場の意志を決めたのであった。こうして、再びミケンの種目は、またまた新しい展開を見せそうな予感をはらみつつある。

 ミケンは、この知らせを聞き、しばらく絶句した。

  ミケン 「50?……種目がわかれへん…

すると、すかさず、別人格の《ミケン》が、ミケン本体に呼び掛けてきた。

《ミケン》 「大丈夫やで。だって、バッタでさえ、いつか出されるかもしれへんから、今までにも何回も練習してきたやろ」
ミケン 「けど、50やで…」
《ミケン》 「ホンマに大丈夫やって。お前の一番苦手なバックに出されへんなら、ましやで」
ミケン 「確かにな。確かに、なんか、前、バイオ&ダッシュさんが『コンメ』っていう単語を呟いてたから、それに比べたらましかも、やんな」
《ミケン》 「そうやそうや、お前は、できる子やで」
ミケン 「そうか、オレ、できる子なんや…やるで!

 こうして根拠のない自信と根拠のないやる気を携えて、ミケンの奮戦記が再び、いやいや三度、いや? 四度?、まあ、何度でも、よいだろう。とにかく、始まるのであった。

 だが…無論、こんなことで終わるくらいなら、新連載をする意味がない。四国進学会水泳部に潜むいっぱいの悪魔たちは、当然のように次なる「悪」を用意してミケンに襲いかかるに違いないのであった。

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