第14話 愛情いっぱい
 25バッタなど、予想のしようがない…という読者諸氏のために、現在までの2人のベストタイムを公表しよう。ダッシュは前回の13話でも記したように、昨年のマスターズにおいて、リレーの引き継ぎながら、17秒44であった。対するミケンは、同じマスターズ大会において、18秒91のタイム。成長力で勝るミケンがどこまでタイムを伸ばしてくるのか、に注目が集まっている。一方のダッシュは筋力とバネにおいて常人離れした能力を発揮する。地味な筋トレを毎日行っているダッシュにはもう1つの武器がある。

 それが、他人に対する負けず嫌い(勝ち気マンマン)な性格なのだ。実際、蔵本での大会も1年目に50フリーで35秒を出したものの、その後2年間は37秒で停滞していた時期があった。しかし、ミケンが参加した2年前には35秒に復帰し、また、短水路では着実にタイムアップを図っている。これも、すべて、『ミケンなんぞに負けてたまるか、むふっ』という、ダッシュの負けず嫌いな根性がなせるわざであろう。しかし、それもダッシュからミケンへの愛情である。
 実際に、バイオが設定したダッシュの25バッタにおけるノルマは15秒を切ること。バイオは、ミケンの現状を18秒後半のまま、と予想している。ミケンは、かなり上手になったものの、やはりバゴー一ンというパワーにおいてダッシュに劣ってしまうことは否めない。練習量を増やしただけでなく、自らに厳しくなり、毎回、25バッタのダッシュを練習中に入れるという噂が本当ならば、17秒前半は出るのではなかろうか。

 ミケンは、25においてはことごとく予想タイムを上回ってきた逸材である。泳ぎのシロウトであるにもかかわらず、ペース配分などを考えた蔵本の初年度こそひどい成績だったが、ガムシャラヒタスラで泳げる25なら、これまで以上のタイムを出せる可能性は高いだろう。
 よって、バイオの予想タイムを参考に、当編集部はミケンの25バッタの予想タイムを16秒0と設定させていただく。このスピードで泳げば、ダッシュも益々タイム向上を図るのは目に見えているではないか。一石二鳥とはこのことであろう。これも、当編集部から2人への愛情である。

 さて、25バッタだけではなく、ミケンは50フリーにも挑む。ターンに挑戦しつつあることは、以前、11話で触れた。但し、ターンができればよいなどという甘いモノではない。1年目48秒、2年目36秒まで伸ばしたタイムを3年目の今年、しかも短水路において、更新できないわけがない。ミケンの50フリーにも注目してみたい。ダッシュの50バッタに勝つことは当然の条件として、やはり、計時競技である以上はタイムも求めなければならないからだ。これも、バイオに聞いてみた。

編集部 「ミケンの50フリーは、何秒くらいですかね?」
バイオ

「ほんなん、泳いでみなければわからんだろ」

編集部 「そこを何とか、予想タイムだけでも…」
バイオ 「予想タイム? …君たち編集部は無責任に予想タイムを発表しているが、我ら水泳部員が、その予想タイムを必ず出さねばならない、という認識を暗黙のウチに了解しているのを知っているのか?」
編集部 「はい…そのつもりです…」
バイオ 「うーむ…。では、しかたない。あくまでもワタシの予想で良いのだな。ならば申し上げよう。33秒0だよ」
編集部 「えっ、わかりました。参考にさせていただきます」

 という、重い口を開いてくれたバイオの予想を参考にして、当編集部の予想タイムをここに掲載させていただく。

ミケンの50フリーは32秒99、だ。バイオはおそらくミケンのことを気遣って、33秒99までの許容範囲を認めるつもり(愛情だ)で「33」という数字を出したに違いない。しかし、そのバイオの侠気(オトコギ。愛情とも言う…か?)を無にはできない…が、バイオの言いたくとも言えない胸の内を慮って、宣言する。

《ミケンは50フリーにおいて33秒を切るであろう!》

ミケンよ、伝説をつくれ…いや、伝説になれ!

(もうちょい、続きまくらせていただく)

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