第9話 唯々諾々(いいだくだく)
【意味】他人の言う通りになること。
 前回、率先垂範などという言葉でバイオを褒めてみたものの、やはりバイオが、そんなに『立派』であるはずがない。実除、バイオは『スイム1000』に入らなかったミケンとハイパーに怒りを覚えていたらしいのだ。そもそも、わざわざ、山城に行ったのに、ミケンもハイパーも自分を避けているではないか…ということで、感情的なバイオの怒りは、しかし、静かに爆発した。

 翌週、6月29日(水)。またしても、バイオがハイパー&ミケンの聖域(サンクチュアリ)である山城に登場した。ハイパーはレッスン前のひとときを楽しんでいたのにもかかわらず、バイオを見つけて、一人静かにため思をつくのだった。

ハイパー

「はーっ…今日、なぜかミケンも来てないし、しかもバイオさんが来てしまった。ユウウツだ」

 そう、なぜか、ミケンの姿がその日、見えなかったのだった。これにはバイオも驚いた。

バイオ 「んっ? なんでミケンがいないんや。あいつ…トンズラこきよったな!」

 またしてもバイオの怒りがフツフツとわき上がる。だが、とりあえず、バイオは『スイム1000』の始まる時刻まで、一人で泳ぎつつ、心を穏やかにしようと試みた。
 『スイム1000』が始まる10分ほど前になって、ひょっこりミケンが現れた。

バイオ 「んっ? おい、お前どないしたんな?」
ミケン 「あ、こんちわ。実はね…いろいろ踏切やら何やらに引っかかってしまったんですよ」

 という、よくわからない言い逃れをするミケンを見て、バイオの怒りは、ある決意をした。

 10分後、『スイム1000』と『スイム600』が始まった。いつも通りにハイパー&ミケンが『スイム600』に行こうとしたその時、バイオが他の会員さんの前であるにもかかわらず大声で叫んだ。

バイオ 「おいっ、ミケン。今日は《1000》に入れ!

 命令形、である。他のお姉様お兄様方も、皆、クスクス笑っていらっしゃる。ミケンは、場を読んだ。そして、ここでは逃げられないことを直感した。
 鳴呼…あわれミケン。唯々諾々。ここにミケンは地獄の『スイム1000』に参加しなければならなくなった。

 が、その日は、先頭ではなく、後ろを泳いだミケンは、なんと『スイム1000』を無事に泳ぎ切ったのである。また一つレベルアップしたミケンを見て、バイオは、やはりミケンの100フリーへのエントリーを考えているのであった…。

(ふぁいと!)

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