第3話 絶体絶命(ぜったいぜつめい)
【意味】追いつめられて、どうしても生きる道が残されていないピンチ。
 それでも、ミケンはためらっていた。いくらバイオ&ダッシュに追い込まれても、泳げないものは泳げないのだ。ためらいの吐息が、人相の悪い肩間からこぼれる。見るに見かねて、ダッシュが。むふむふっ。動いた。
 バシャーン。何と、ミケンに当てつけるかのようにダッシュがバッタを泳ぎだしたのだ。バイオが、目でミケンを促す。ダッシュは軽やかに25を泳ぎ、さらにターンした。
ミケン

「あかん…これは、あかん。絶体絶命や。ダッシュさんが泳ぎ、バイオさんが後ろにいらっしゃる。泳がんと、ピンチや…」

 思い切って、ミケンは泳いだ。しかし、ミケンは結構、水泳に関しては小心者である。というより、それは当然である。なんせ、まだ泳ぎを覚えて1年しか経っていないのだから。そんなミケンを、それでもバイオ&ダッシュは許そうとしない。ミケンは心の中で叫ぶ。
ミケン 「あーっ、なんでこんな日にハイパーさんは、来てくれないんや!」

 しかたがない。ハイパーは体調不良を克服して日曜の大会に出場し、まだ疲れが癒されていないのだから。よって、ミケンの心の叫びは、空回りするだけだった。

バイオ 「まあ、とにかく泳がんかいや」

 やや口調の厳しくなったバイオの勢いに押されて、ミケンは泳いだ。泳ぎながらミケンは自分に言い聞かせる。まだや、まだまだや。まだ、頑張ったらあかん。最初からとばしたら、もつわけがない…
 ゆったりとしたフォームで泳いでいるはずだったのに、25をターンしてから、ミケンの身体は、パタリと止まった。やむなくフリーで帰ると、バイオが予想外に笑っている。

バイオ 「よう頑張ったな。けど、それではまだ50は無理やな」

 ミケンは喜んだ。…なのに、その瞬間、バイオが言った。

バイオ 「オレの記憶が確かなら、明日の山城のスクールでは、『スイム1000』っていうレッスンがあるよな。それを受けろ」

 ミケンは、またもや絶体絶命に陥った…。

(ガビーン)

<<水泳部TOPへ