第1話 魑魅魍魎(ちみもうりょう)
【意味】さまざまな化け物。
 とかく、言葉は一人歩きするものだ。特に四国進学会水泳部内において、中でもバイオ山本&ダッシュ吉田の前で、何か単語を呟こうものなら、その単語は様々な修飾語によって、本人の意図とは、やや(かなり?)かけ離れた文章として存在感を放ちはじめる。バイオにいたっては、自称『作家』なので、ますますたちが悪い。バイオは、以前、『二つの母国』『もう一つの引退試合(ファイナルレース)』を出版したことがある。両作品ともバイオ日く、「スポーツノンフィクションやがな」らしいのだが、両作品の主人公であるバンデワーレ氏の証言は、このようなものだった。

「んっ? ああ、あれな。確かに事実…やで。でも、格好悪い9割を思い切って削除した『ノンフィクション』やな。だってな、最初にあの原稿を読んだ時、オレ、感動して泣いたで。ええ話や、って。でも、あの話、オレが主人公のはずなんよな…あんなに格好よかったっけ、オレ…

 つまり、事実の一部分だけを文章として構築する才能をバイオは持っている、ということなのだ。まさしく、魑魅魍魎。これが四国進学会水泳部、である。この、魔の手にかかったのが、2004年の夏にデビューをさせられたミケン森田と、2005年の夏にデビューをさせられたハイパー市原にほかならない。彼らは、カナヅチだった。にもかかわらず、バイオとダッシュの謀(はかりごと)により、立派なスイマーとして今では元オリンピック選手のバンデワーレ氏からも、

「あいつら、ホンマに、うまくなってるよな。素人とは思えへんわ」

というコメントをいただいた。何といってもバンデワーレ氏は、ダッシュ・ミケンの結婚披露宴の司会を務めたほど四国進学会水泳部とは縁が深い…。とはいえ、ミケンの結婚は2003年11月。そう、この時点では、まだミケンはデビューしていない。ただの「人」だったのに、バンデワーレ氏が知らない間に、「大変なことになっとんなあ…」という状況に、ミケン・ハイパーは追い込まれていたのだ。

 そのミケン、6月12日に行われたマスターズ大会で、ついにバック(背泳)を泳がされた。リレーの第1泳者として、である。横には、そのバンデワーレ氏。ミケンは、びびりながらも持ち前のミーハー精神を満足させていた。

ミケン 「オレも、なかなかのもんや。1年前までは泳がれへんかったのに、今ではオリンピック選手のバンデさんと泳ぐんや」
《ミケン》

「そうやで、ビキャンビキャン。あのバンデさんと泳げるお前は幸せ者やでえっ」

 ミケンの内部にいる《ミケン》も祝福を措しまない。そして、レース。この詳細は、マスターズ大会報告をご覧いただきたい。とにかく、この無様なレースにダッシュが、機嫌を損ねた。これも詳細は、マスターズ大会報告の動画で。しかし、ミケンは、へこたれない。つい、ポロリンと本音をこぼしてしまったのだ。
ミケン 「そんなん、言われても…ボク、今年は最初から50メートルを視野に入れてトレーニングしてるんで」
 それを耳にしたのがバイオだった。バイオは、即座に決定事項を口にした。
バイオ 「よっしゃ、夏の蔵本。今年、オレとダッシュは全国実業団に出るから、日が重なってる蔵本には出られない。だから、ミケンとハイパーで、観客をわかせてこい!」
 ミケンは動じない。去年の経験が、あるからだ。が、バイオのもう一言は、ミケンを奈落の底に突き落とす。
バイオ 「とにかく、ミケン。お前はフリーとバッタだ」

 このコーナーでウェブ上に掲載された種目、タイム。これは殆どが具現化されていることを、勿論、ミケンもハイパーも知っている。
 ここに、ミケンの50バッタ&50フリー。ハイパーの50フリー参戦が決定された。ああ、四国進学会水泳部…彼らに栄光あれ…。

(ふふっ)

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