第6話 残り物に福
 バイオは、ある日、森田夫婦と食事を共にしていた。そこで、森田の奥さんがバイオに訊ねてきた。

森田妻 「あのーっ、水着って、まだ完成しないんですか?」

 実は、水泳部新メンバー加入を記念して、今回のマスターズ大会に間に合わせようと、四国進学会チームの水着を新調する予定になっているのだ。が、しかし、大会を目前に控えているというのに、なかなか仕上がらないのだ。森田は、少し「リゾート」っぽい、しかし、切れ上がった水着を練習で使っており、それが奥さんには気に入らないのだという。だが、発注してはみたものの、希望の品がほとんど在庫切れで、結局三人分揃うのは直前になりそうだというのだ。

 6月9日(水)、午前11時。待望の水着が完成した。(映像は、またの機会に…)喜び勇んで、早速、バイオと共に森田は試着し、試しに泳ぐことにした。

 水着は、膝までを覆う最近はやりのもので、実際に着て泳ぐと、バタ足がしやすいことに森田の眉間は気づいた。谷間が、全てを物語っている。森田は調子に乗った。ドンドン泳いだ。いつも泳ぐ藍住ではなく、その日は山城で泳いでいた森田を、会員さんたちが、

「ありゃありゃ、あの人は、えらいがんばっとんなあ」

「力、入っとんなあ」

 などと眺めていた。
 そんなとき、山城の所長でオリンピック選手を二人も育てたT氏が、バイオとたまたま会話をしていた。そこに、森田が勢いよく泳いできたのだ。

バイオ 「彼が、今度のマスターズでデビューする森田です」
T氏 「シロウトだったんだろ?」
バイオ 「はい。で、今度、20秒を破ったら、夏の蔵本の大会にエントリーしていいですか?」
ちなみに、T氏は徳島県水泳連盟の事務局長である。
T氏 「別に、破れんでも、出してもええんちゃうん」

 皆、実に無責任である。こうやって、森田の蔵本デビューは県水泳連盟役の皆の了解を得て、着々と進行中であった。

バイオ 「どうでしょう、あの泳ぎで20秒切れますかね」
T氏 「うーん…」

 水着も新調した。結局、残り物に福があった。実によい水着だ。また、森田はタイムを縮めそうだ。が、まだ、一つ問題が残っている。森田は、飛び込みによるスタートをしたことがない…

 あと4日で本番なのに。

(以下、次回へ)

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