第4話 知らぬが仏
 森田の同居する奥さんの実家。前回に述べたシャワーの修理は完了した。それでも森田は、朝、混雑していない時間帯に泳いでから出勤するリズムを作り上げてしまったようだ。

「朝、ベビーコースの横で、カッツカッツ泳いでますよっ!」

 森田自慢の眉間の皺は、最近、心地良い疲れによって、ますます人相の悪さを増しながら、深い彫りを浮かべていた。

 そんな、森田を頼もしく見守っている…いや、眺めている…いやいや、陥れようとする「優しく、鬼のような」部員が、いた。ダッシュバイオだった。

5月29日(土)昼:阿波校にて

ダッシュ 「最近、森田が、ごっつい練習してますよ」
バイオ 「そうみたいやな。んっ? もしかして、この調子なら、夏、蔵本で行われる『県の勤労者大会』にエントリーできるんちゃうか?
ダッシュ 「むふっ。できます」
バイオ 「ほな、明日、5月30日の高校総体の日。オレ役員をしに行くから、水泳連盟の関係者に聞いてみとくわ」
5月31日(月)昼:徳島校にて
バイオ 「おいっ、会長をはじめ、オエライサンに聞いてみたら、『まあ、本番で泳ぎきれるんやったら、かんまんだろ』ってさ」
ダッシュ 「むふむふっ…決まりですね」
バイオ 「そうやな。そのかわり、森田の知らんところで一つ条件を設定しとこうや。マスターズで、森田が○○秒を出したら、エントリーしようや
ダッシュ 「むふむふむふっ…」

 6月1日現在、森田はこのことを知らない。むふふっ。

(以下、次回へ)

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