第3話 灯台下暗し
 森田が奥さんの実家で同居を始めてから、奥さんのご両親は燃えていた。8月に生まれくる『初孫』のために、家を総点検していた。奥さんのお父さんは、特に燃えていた。そして、あるものを見つけてしまった。
義父 「おいっ、風呂場の裏にシロアリがおりそうなでよ」
森田 「ほな、駆除するんですか」
義父 「ほうやなあ。ほなけん、風呂には入れるけんど、シャワーが使えんだろうな」
森田 「…」

 森田の日課は、朝のシャワーから始まる。なのに…これでは、一日が始まらない…。森田は悩んだ。そもそも、他人様の家に行って、
「すんません、シャワー貸していただけませんか」
などと、朝っぱらから言えるはずがない。
「どっかにシャワーだけでも使わせてくれる24時間営業の銭湯があったらええのに…でも、藍住にはないよなあ…」
 そこまで考えて、森田は、灯台下暗し、家から自家用車で3分の位置にある、アレを思い出した。

「そうやっ。OKに行って、泳ぎがてら、シャワーを浴びたらええねんや!」

 森田は、快適な一日を過ごし、生徒に爽やかな授業を提供するために、そして、ついでながら、きたるマスターズのために、週3〜4日、朝の10時半から泳ぐようになったのである。
 森田の泳ぐ、その時間帯はベビーコースを横で行っている。それを見て、森田は、ますます燃える。

「やるで。オレもパパになるんや。やったるで!」

 かくして、森田は好むと好まざるに関わらず、着々とタイムを更新(?)しつつあるのだ。24秒だった森田のクロールが、果たして、何秒アップしているのだろう。実際に知るものは誰もいない。

(以下、次回へ)

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