第3話 うっ?
 試練の夏に向け、ハイパーは決意した。
「ミケン森田だって、カナヅチからのスタートだったんだ。そうだ、オレだって、やればできる! よしっ…新学期になったら、週に2回は必ず泳ごう」
 さすがにハイパーは男の中の男である。逆境を乗り越えるために、自らが自らを追い込むことで、次のステップに上がることを知っていた。ハイパーの決意は、メラメラと燃え上がり、ハイパーは益々熱血化してきた…。

 が…今週も不幸は訪れた。バイオ、ダッシュ、ミケン、ハイパーは、E'sアカデミーの卒業アルバムを編集している編集員だ。ハイパーは責任ある編集長なのである。原稿の校正をするために、4人とウェブマスター佐中、略してウェブマスの5人で会議を終え、一息ついて一服をしていた、そのときだった。

バイオ 「ほな、もし、正式にマスターズでリレーに120歳以上の部ができたら、メドレーリレーに出るからな。ほんで、種目なんやけど、ハイパーはフリー(自由形のこと。往々にしてクロールを泳ぐ)しかできんだろ。で、オレがブレスト(平泳ぎ。通称ブレ)だろ。ほな、ダッシュとミケンは、どうする?」

 ダッシュは1年前のマスターズでバック(背泳)に出て、優勝しながらも、「二度とやらんぞ!」の台詞を残した。なぜなら、ゴールタッチで壁に激突してしまったからだ。その上、ミケンがバッタ(バタフライ)を泳いで、完泳したのを見届けてから、ひそかに練習を積んでいるらしいのだ。
 やはり、すかさずダッシュがつぶやいた。

ダッシュ 「ほな、オレはバッタにするわ。ミケン、お前がバックやな。むふっ」
ミケン 「えーっ、ほんな…。今度こそ楽になると思うとったんですよ…」
しかし、縦社会四国進学会水泳部に「イヤでございます」の文字は、ない。
不承不承、うなずきつつミケンがバイオに訊ねた。
ミケン 「そういえば、120歳以上の部に、TSDの人たちもエントリーするんですよね?」
バイオ

「ああ。しかも新加入の、ヤツも参加するやろ」

ミケン 「えっ『ヤツ』って、もしかして、ボクやダッシュさんの結婚式の司会をしてくれた、『あの方』ですか?」
バイオ 「おう」
ミケン 「………そんな………世界9位のあの人とボクとでは、差が開きすぎますよ。たとえ25メートルでも」
バイオ 「大丈夫やがな。おまえが泳いでるときに、まだ他の選手も泳いでるから。孤独にはなれへんって」
 メドレーリレーはバック・ブレ・バッタ・フリーの順番で泳ぐのだ。つまり、ミケンがどんなに遅くとも、TSDチームは、まだブレの選手が泳いでおり、逆に言うと、ミケンはほとんど注目を浴びずに、こっそりと泳ぎ終わることができるのだ。
ミケン 「あっ、言われてみればそうですね。でも、他のチームがゴールした頃に、ハイパーさんがスタートですよね。」
バイオ 「そうなんだわ。だから、ハイパーのデビュー戦は、会場にいるすべての人々が注目する中でのレースなんよ」
ハイパー 「うっ…」

 いきなりの展開に、胃がキリキリと痛みはじめたハイパー。

 さあ、ハイパーの運命や、いかに?

続きまくる)

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