第18話 あっ!
 6月12日。朝から憂鬱なハイパーだった。その理由は、大会参加だけではなかった。ハイパーは3日ほど前から、体調不良。熱を出していたのだった。親友でもあり最大の理解者でもあるダッシュにだけは、事情を打ち明けていたハイパーは、男の中の男だった。
ハイパー 「ダッシュさん、誰にも言わないでください」
ダッシュ 「んっ? 何を?」
ハイパー 「実は、ボク熱があって、病院で注射を打ってたんですよ」
ダッシュ 「お前…」
ハイパー 「…」

 こうして、ハイパーは絶不調のまま当日を迎えた。自分一人の個人種目だけなら、棄権は簡単だ。が、今回のコンセプトとして、「四国進学会チームでのリレー出場」がある以上、責任感の強いハイパーは休めなかったのである。

 アップ時、コマツコーチ改め、スミカコーチがハイパーを探していた。

スミカコーチ 「バイオさん、ハイパーさん知りませんか?」
 スミカコーチは大会4日前にハイパーに飛び込みを教えたのだが、ハイパーが上達するのを見届けられなかったので、何とか本番前に、「危険ではない飛び方」を伝授したかったらしい。しかし、ハイパーの姿は見えない。
バイオ 「うーん…ダッシュとミケン、ロージーは、飛び込みの列に並んでいるんだけどな…ハイパーは見あたらないな…」

 結局、後でわかったのだが、この時、ハイパーは熱による寒気から、控え場所で体養を取っていたらしい。

 そして、デビュー戦となった合計年齢120歳以上の部100メートルメドレーリレー。
 ハイパーは、飛んだ…いやいや、跳んだ、いやいや、翔んだ。懸念されていた飛び込みもダッシュの上に落ちるどころか、軽やかに翔んだのだった。皆に見届けられながら、ゴールしたハイパーのタイムは、引き継ぎながらも17秒70であった。
 実際のレースでは、引き継ぎのアドバンテージがないので、0.5秒ほど遅くなるのが通例である。果たして、本番、25メートル自由形でハイパーは何秒を出すのか!
 皆の期待と不安を一身に背負って、午前11時20分。ハイパーはミケンの隣で、またもや……翔んだ!

 タイムは…あっ! 誰の予想タイムよりも速い17秒49

 ここに、男の中の男、ハイパーの競泳デビュー戦は終わった。この数ヶ月、様々なプレッシャーを与えていたストマックさえもがハイパーを祝福していた。

ストマック 「なあ、お前は男やな、ミシミシ」
ハイパー 「ああ、オレは頑張った」
ストマック 「大したもんやで、ミシミシ」
ハイパー 「ふふっ」
 その時、遠くで悪魔バイオの声が聞こえてきた。
バイオ 「ハイパーも大したもんやな。これで蔵本で50自由形のミケンvsハイパーが楽しみになったな」
ハイパー 「…」

 ハイパーの戦いは、まだまだ始まったばかりである。

(続きまくりたいところだが、一旦終わらせていただきます)

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