| ダッシュは、思った。
「そういえば、去年、ミケンは本番当日まで飛び込みをしてなかったよな。で、当日に必死こいて練習しとったけど、結局『飛び込み』というよりは『落ち込み』に近かったやんか。でも、あれは個人種目じゃよな…」
ダッシュの不安。それは、まさしく「身」の危険なのだった。
6月12日。ハイパーのデビュー戦は、100メートルメドレーリレーのアンカーでフリーを25を泳ぐこと。つまり、それが「初飛び込み」なのだ。だが、あくまでもリレー、である。個人種目なら自分のコースには誰一人いるはずもない。しかし、リレーは前の泳者がコースに存在するのだ。普通の選手なら、何も考えずに前の泳者を軽く、ポーンと飛び越える。が、ハイパーはド素人である。前の泳者の上にズドーンっと落ちる可能性もなきにしもあらず、なのだ。
メドレーリレーの順番はバック・ブレスト・バッタ・フリー。バックはミケン、次のブレはバイオ。彼は経験者なので問題なさそうだ。バッタはダッシュ。彼も既にマスターズ歴7年目を迎えるので問題なし。そしてアンカーがハイパー…。ここに、ダッシュの恐怖が成り立った。バッタで泳ぎ切ったダッシュの上に、ハイパーが落ちるかも知れないのである。
最近は、安全性を考慮して、大人の飛び込みは多くのプールで禁止されている。つまり、ハイパーは結局ド素人のまま本番を迎えてしまうのだ。
危うし、ダッシュ……
しかし、またもや救いの手を差し伸べてくれたのがコマツコーチだった。彼女は、当コーナーを愛読しているとかいないとか、様々な憶測が流れているが…まあ、それはさておき、ハイパーとミケン、さらにはロージーに、さりげなく救いの手を差し伸べてくれたことに、間違いは、ない。
よかった、ダッシュ。きっと、ハイパーは……本番までに「飛ぶ」ことができるだろう。その内容は、次回に。
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