第2話 まじかよ…
 不幸にもずいぶん慣れてきた森田は、早速、見よう見まねでバタフライを泳いてみた。
すると、意外なことに、泳げたのだ。自分では見えないので、格好がいいのか悪いのかはわからない。しかし、25メートルたどりつけたではないか。ちょっぴり自信をつけた森田は、しかし、あえてそれは黙っておくことにした。下手なことをバイオの前で口走ると、
「ほな、50に出ようか!」などと言われかねない。
マスターズ大会への申込期限の前日、バイオは一応、気遣って森田に聞いた。
バイオ 「おい、もし、本当に自信かなかったら、25メートルバタフライのかわりに、50メートル自由形でもいいぞ」
森田は、悩みながらも答えた。
森田 「いや、バタフライにしますよ。こんな機会でもなけりゃあ、一生バタフライを覚えるチャンスなんかないですからね」

 あっぱれ! …である。男! …である。森田は、自らに降りかかる災難を、自らの糧として逆に活力へと変えていく強さを持っていたのだった。さすがに、パパ。これは、パパとしての責任感が、少しずつ表面に出ている証拠なのだ。

 と、ほめるのは、これくらいにしておこう。さて、森田はバイオに自分のバタフライを見てもらうことにした。

ミケン 「さあ、格好いいとこバイオさんに見せたろや」
森田 「よっしゃ、まかせとかんかい」
だが…結果は無惨だった。
バイオ

「おい、それではカッコワルイわ。早速、来週から、スクールで指導してもらえ。そうだ、藍住のIコーチにオレが頼んどったるわ」

 Iコーチは兵庫県から来た29歳の青年で、昨年、アテネで金メダルを獲得した柴田さんを教えていたOK脇町の阿部先生の弟子にあたるツワモノだ。昨年の夏は、源純夏さん、今年の春はIコーチに、森田は水泳を習うことになった。

 森田は、愕然とした。「オレのバタフライ、あれはダメだったんか…まじかよ。」

 森田の挑戦は、始まったばかりだ。

(以下、次回へ)

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